<9.kyuuの星のお便り>vol 6 琳派 

風神雷神図屏風   アクエリアス時代へ

 

1オクターブ高い〈知〉へ 風神雷神図屏風

 

 俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一

 

Wind God and Thunder God

Tawaraya SotatsuOgata KourinSakai Houitsu

 

 

『風神雷神図屏風』Wind God and Thunder God 17世紀 俵屋宗達

 

 

目次

1) 風の時代・アクエリアスの時代へ

2) これまでのグレート・コンジャンクションを眺める − 約200年ごとに変わるエレメントとの関係 −

 

風の時代 ・・・・ 双子座・天秤座・水瓶座でのローテーション

1226(13-14世紀) 【転】 思考 拡がる 水の時代 ・・・・ 蟹座・蠍座・魚座でのローテーション

1425(15-16世紀) 【結】 感情 混ざる
火の時代 ・・・・ 牡羊座・獅子座・射手座でのローテーション

1603(17-18世紀) 【起】 精神 昇る
地の時代 ・・・・ 牡牛座・乙女座・山羊座でのローテーション

1802(19-20世紀) 【承】 感覚 定める 3) アート作品の中に星空を探すVol.5「風神雷神屏風図」

 

 

 

4) 1オクターブ高い〈知〉へ

 

『風神雷神図屏風』Wind God and Thunder God 18世紀 尾形光琳 こちらは、宗達をリスペクトして、光琳が模写した風神雷神図です。

 

 

 

 

1) 風の時代・アクエリアスの時代へ

 

2020年の冬至過ぎ、クリスマスの3日前...12月22日の夜明け前に、水瓶座の0度台で グレート・コンジャンクションという天体のイベントが起こります。

この天体のイベントは約20年に1度起こるのですが、10回ほど、、、約200年の間は、 同じエレメント...元素...の星座でローテーションします。

今から約200年前...19世期初頭からは、牡牛座・乙女座・山羊座といった地のエレメント で起こっていました。 が、今回からは、双子座・天秤座・水瓶座といった風のエレメントで 起こってゆきます。 風のエレメントでのローテーションは、実に13−14世紀以来のことです。

 

地から風に移行するということで〈風の時代〉、また水瓶座で起こるので〈アクエリアスの時 代〉などと言われ、注目されている今回のグレート・コンジャンクション。そのイメージはどういったものなのでしょう?

 

 

今回は、江戸時代に活躍した俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一など琳派と呼ばれる絵師たちが描いた『風神雷神図』の星空のなかに、手がかりを探してみたいと思います。





2) これまでのグレート・コンジャンクションを眺める − 約200年ごとに変わるエレメントとの関係 −

 

 

 

グレート・コンジャンクションとは、太陽の周りを回っている木星と土星が、360度のうち同じ度数で重なる天体のイベントです。

 

 

太陽の近くを回る水星・金星・火星は〈個人〉や〈私〉に関わる天体ですが、さらに外側の木 星や土星は〈社会〉や〈公...おおやけ〉に関わります。

 

二つの星が20年ぶりに再会すると、その後20年間の〈社会〉の発展の方向、そのビジョンを達成させる場とトレーニング方法、またルールなどが新しくなります。

 

 

まずは前回の風の時代から今年の地の時代まで、4つのエレメントの時代を、土星を〈公の権限〉、木星を〈歴史の舞台〉、そんなテーマで眺めてみましょう。

社会的な内容ですが、絵などで雰囲気を感じてみてくださいね。

 

 

風の時代 ・・・・ 双子座・天秤座・水瓶座でのローテーション 1226(13-14世紀)​ 【転】​ 思考 拡散する

 

 

『竹雀図』南北朝時代 可翁 可翁は日本の初期水墨画を代表する画人です。素朴、力強さ、余白による静寂さに禅的な武士の時代を感じます。

 


〈風〉は、起承転結ならば、3番目の【転】

 

 

日本でいう中世の前半、、、鎌倉時代から南北朝時代が終わるあたりまでの約200年です。

 

 

武家社会の始まった鎌倉時代ですが、公の権限の大半は、いまだ天皇家にありました。承久の乱が起こり、天皇家が武家に敗れると、歴史の舞台は天皇家のある京都から、武家のいる鎌倉へと移ります。

 

 

 

 

水の時代・・・・蟹​ 座・蠍座・魚座でのローテーション

1425(15-16世紀) ​【結】​ 感情 混ざる

 

 

 

 

『松林図』[右隻] 17世紀 長谷川等伯 雅やかな公家文化と禅的な武士文化が融合した室町文化。千利休の茶の「わび・さび」、枯山水庭園や雪舟の水墨 画、また観阿弥・世阿弥の能の「幽玄」に触れると、この時代の心情に触れられるかもしれません。

 

 

〈水〉は、起承転結ならば、終わりの【結】

 



日本でいう中世の後半、、、南北朝時争いが終わった後の室町時代と安土桃山時代。そんな戦国時代が含まれた約200年です。

南北朝で対立していた天皇家のうち、北朝の天皇家が武家と密接だったこともあり、歴史の舞台は北朝のある京都へと戻ります。けれども公の権限は、天皇家から、どんどんと武家へ移っていきました。

 

武家の社会が進んでいましたが、舞台が京都であった時代までは、「神さまや仏さまが見ているよ」といったような神々の世界のルールが健在。人々の善悪の領域を示していました。

 

 

下克上や出自がわからない農民や商人たちが社会に進出した時代。京都の文化に地方の禅の文化が混じわるなど、カオス状態のこの時代は、まさに水的と言えますね。

 

 



「燕子花図屏風」[右隻] 尾形光琳 大阪や京都など、上方がまだ中心だった江戸時代前期の元禄文化。河川敷を新田にするなど、自然の世界の ルールへも人間がグッと介入してゆきます。光琳の作品を観ると、神々の創った世界に対し、善を持った関わり方をすると、美しいものとなる...そういったことを思います。

 

 

 

火の時代 ・・・・ 牡羊座・獅子座・射手座でのローテーション

1603​(17-18世紀) ​【起】​ 直感 昇る

 

 

 

〈火〉は、起承転結ならば、始まりの【起】

日本でいう近世、、、江戸時代の始まりから後半までの約200年です。

 

 

関ヶ原の戦いで西軍に東軍が勝利。歴史の舞台はすっかり東の国、、、江戸へと移ります。公の権限も、ほぼ全て武家が持つことになりました。

 

織田信長による比叡山延暦寺の焼き討ち以降、「神さま仏さま」といった神々の世界と人間の世界の関係が薄れます。武力を持った人間が、人々の善悪のルールをつくるようになります。

 

 

ちなみに、一つ前の火の時代では、平安時代が始まっています。京都と江戸、西と東の舞台に独立ののろしがあがった、、、そんな火的なイメージが浮かびますね。

 

 

 

『松に月』1906年 菱田春草 墨の線を描かず、光や空気の表現をする朦朧体という作風の絵です。遠近法などの西洋の描き方を取り入れていま す。

 

 

地の時代 ・・・・ 牡牛座・乙女座・山羊座でのローテーション

 

1802​(19-20世紀)​ 【承】​ 感覚 固定する

 地は、起承転結ならば、2番目の【承】

 

 

日本でいう近代から現代、江戸時代の後期から今年までです。

 

 

公の権限は、武家から、国民国家へと移ります。歴史の舞台は、投票権を持つ国民の住む全ての場へと移ります。

 

 

黒船来航以降、西洋のモノや文化が日本にどんどん入ってゆきます。植民地支配を避けるため明治維新が起こり、国家が誕生します。ルールも、第二次世界大戦中までは天皇が取り決める大日本国憲法ですが、戦後は国民が主体となって取り決める日本国憲法となります。

 

 

 

 

3) アート作品の中に星空を探すVol.5「風神雷神屏風図」

 

 

 

『風神雷神図屏風』Wind God and Thunder God 19世紀 酒井抱一 光琳をリスペクトして、抱一が模写した風神雷神図です。憧れの光琳が描いたものが、 俵屋宗達の模写と知らず... 抱一も同じ画題に挑んだとは興味深いですね。

 

 

さて再び、私たちのいる2020年12月21日に



起承転結の【転】の〈風〉の時代
が来ます。。




これから約200年、グレート・コンジャンクションが風の星座でローテーションしてゆくと、どうなってゆくのでしょう?


前回はの鎌倉時代。公の権限の大半は、まだ旧組織にありました。現代で旧組織に当てはまりそうなもの、新組織に当てはまりそうなものは何でしょう?

 

 

乱が起こり、旧組織が新組織に敗れ、、、

 

 

舞台が旧組織のある舞台から、新組織のある舞台へと移っています。現代で旧舞台に当てはまりそうなものは?新舞台に当てはまりそうなものは何でしょう?

 

 




『夏秋草図屏風』182122年頃 酒井抱一 宗達、光琳、抱一の3人は、リアルに出逢っていません。今のように検索すれば、本人の写真や絵に出逢える時代で もありません。この〈縁〉といったものは、どんなふうに起こるのでしょう?

 

 

 

 

今回のグレート・コンジャンクションは、水瓶座の始まり1度で起こります。

 

 

 

水瓶座は、地の星座の最後、山羊座の後にある星座です。

 

 

 

地は “モノ” 。

 

国籍・性別・年齢・役 職... そういった身体についた “モノ” 、また、場という “モノ” を含みます。

 

 

水瓶座に入ると、それら モノに対する執着は手放されます。

 

 

場という空間を超え、時間を共有するという〈共時性〉どこの場でも通ずる〈普遍性〉を、水瓶座は大切にします。

 

 

そんな水瓶座の支配星は、天王星です。

 

 

土星の外側を周る天王星や海王星や冥王星といったトランスサタニアンは、天上の見えない世界を担当しています。

 

 

天王星は、〈知〉を司る水星の1オクターブ高い星です。地上の世界で積み上げてきた〈知〉を開放させ、天上の世界を取り込み、アップデートを促す天体です。

 

 

天王星の90度傾いた公転軸に表れているように、その引き起こされ方は想定外!

 

雷や稲妻が走り、目が覚め、頭が冴えるよう... 革命的なカタチで起こります。

 

 

ここで、もうお気づきの方はいらっしゃるかもしれません。

 

 

今回の風神雷神図屏風の風神には 風の星座を、雷神には天王星、ということで水瓶座...アクエリアス...を見つけることができるのです!

 

 

 

 

 

4) 1オクターブ高い〈知〉へ

 

 

 

こちらは屏風ではなく襖絵です。鈴木其一は抱一のお弟子さん。 【起】俵屋宗達17世紀:京都 →→→ 【承】 尾形光琳18世紀:京都 →→→ 【転】酒井抱一19世紀:江戸。とすると其一は何になるでしょう?

 

 

 

実は、光琳の『風神雷神図屏風』の裏面には、抱一が『夏秋草図屏風』を描いています。

 

 

 

雷神の裏面には、雨に濡れる夏草、風神の裏面には、風に揺れる秋草。また、天上の世界の神々が描かれた表面に対し、地上の世界の自然を裏面に描きました。

 

 

 

さらに、表面の金箔を、宗達の活躍した舞台、、、京都の〈雅〉と見立て、裏面の銀箔を、自身の活動の場、、、江戸〈粋〉と見立てて描いたのでは?とも言われています。

 

 

宗達は17世紀、光琳は18世紀、抱一は19世紀。

 

生きていた時期が異なり師弟関係もない3人は、作品に込められたスピリットに共鳴し、世紀を超えてコミュニケーションをとることで、教えや励ましを受け創作をしています。

 

 

 

風の時代とは、〈思考〉の時代

 

 

 

今回のグレート・コンジャンクションは、どうなってゆくのでしょう?


 

風の時代は、〈コミュニケーション〉や〈情報〉の時代と言われますが、受け取るだけではなく、自ら〈思考〉する時代。

 

これからの風の時代は、各々が風”思考の力”を働かせ自分自身が生きていく世界を感じ、選びとることが求められているように感じているからです。


 

宗達から光琳、光琳から抱一、そんな時間の縦の流れで繋がった人々とコミュニケーションをしていたように、、、また、抱一から基一、そんな空間の横の広がりで出逢った人々へ情報が渡ったように、、、このコラムに拡散された星空の中で、ぜひグレート・コンジャンクションのイメージを〈思考〉されてみてください。


 

それではどうぞ、良い年末年始を! またお会いしましょう。



 

 

あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。 あなたは十二宮をその時にしたがって引き出すことができるか。 北斗とその子星を導くことができるか。 あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。

『ヨブ記』の第38章 31 − 33の一説-----------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

次回の9kyuuの星のお便りでは、モンドリアン の作品の中に星を探します。

 

 

 

美術家 田谷美代子

印刷会社勤務の傍ら、子どもとの自然体験の場や絵本教室に通う。 絵を描くための哲学の必要 性を感じ、渡独にて人智学、その後占星術に出会う。 国内、フランスのギャラリーにて作品の 出展や、本の装丁、プロダクトパッケージなどを手がける。 また、現在子どものアートワーク ショップの開講に向け準備しております。

 

 

 

9kyuu Creative Director / Designer SAYAKA HAMADA 9kyuuのクリエイティヴディレクター / デザイナーであり、数年前よりミツバチの生態やアー ト、占星術、人智学、自然哲学、民俗学などを学んでいます。