9kyuu星の便りvol7 モンドリアン コンポジション


普遍と個別の等価値

 

コンポジション - 新しい造形 -

 

ピエト・モンドリアン

Composition​ - Neue Gestaltung -

Piet Mondrian

 

 

 

 

 

 

 

目次


1
) アート作品の中に星空を探すVol.5「コンポジション-新しい造形-

 

 

2) 三次元の答え 二次元の問い

 

 

3) 十字架の黒

 

 

4) 宇宙の白・グレー・黒 地上の赤・黄・青

 

 

5) 個別の輝きの中にある普遍の光

 

 

 

 

 

1) アート作品の中に星空を探すVol.5「コンポジション-新しい造形-

 

 

2021年がスタートしましたね。風の星座、水瓶座でのグレート・コンジャンクション後の1年の始まりはいかがだったでしょう...

 

 

水瓶座の支配星、天王星は、 距離をおく変化するといったテーマを持っています。年末 年始は故郷に帰らないなど、いつものお正月のスタイルが変わった方も多いのではないでしょうか?

 

 

2021年初の新月は1月13日、山羊座で起こります。その翌日の14日には、昨年の8月 15日から逆行していた​水瓶座の支配星の天王星が、5ヶ月ぶりに順行に戻ります。1月20日には水瓶座に太陽が入るなど、ますます水瓶座的なテーマに触れてゆく機会が増えますね。

 

 

そんな今回は、出生時のホロスコープのアセンダントと月が水瓶座にあるオランダ出身の画家、ピエト・モンドリアンの作品の中の星空を眺めてみることにしましょう。

 


『赤い木』The Red Tree 1908-1910

 

 

 

とはいえモンドリアンって誰??? そんなふうに名前を知らない方も多いのではないでしょうか。

 

 

モンドリアンは「宇宙の調和を表現するためには、完全に抽象的な芸術が必要」とストイックに探究した末に、『新しい造形{新造形主義}』という芸術論を打ち出し、赤・黄・青・白・グレーの平面と黒い直線の『コンポジション』シリーズを生み出した画家です。

 

『新しい造形』は、20世紀初頭の絵画の常識を大きく変え、多くの画家たちに影響を与えました。また『コンポジション』シリーズは、建築やインテリア、ファッションなど、絵画というジャンルを超えた世界にも反映されています。

 

さて、そんなモンドリアンの芸術論にある〈宇宙の調和〉とはいったい何なのでしょう? 何故〈抽象的な芸術〉でなければならなかったのでしょう?

 

 

 

そんな謎を紐解くために、まずモンドリアンの具象作品から、抽象作品への変化を眺めてみましょう。

 


『灰色の木の研究』Study of Glay Tree 1911
私たちの目に見えている木は、おおよそこういった立体感を持ったカタチをしていますね。


『灰色の木』Glay Tree 1912
雨に濡れた窓越しに見ているように輪郭がぼやけています。奥行きがなくなり、空間がペタリ薄くなってきました。
 

 

『花盛りの林檎の木』Blossoming Apple Tree 1912
個性的だったそれぞれの枝の曲がり具合などが、どれもこれも似たような曲線や直線になっています。

 

 

『花盛りの木』Trees in Blossom 1912
もはや、幾何学模様のようです!




2) 三次元の答え 二次元の問い

 

1872年生まれのモンドリアン。この樹木のシリーズは、40歳ごろの作品です。

 

 

それまでのモンドリアンは、バルビゾン派のミレーやポスト印象派のゴッホ、新印象派のスーラや象徴主義のクリムト、フォーヴィスムのマティスなどの影響を受けた作品を描いていました。

 

 

39歳になったモンドリアンは、故郷オランダの展覧会で目にしたピカソやブラックのキュビズム作品に影響を受けます。その教えを乞うため、キュビズム全盛期のパリに移住します。

 

 

20世紀が始まる前の画家たちは、見える世界にあるカタチで表現する具象作品を描いていました。近くにあるモノを大きく、遠くにあるものを小さく、光があたる部分を明るく、光があたらない部分を暗く、、、そんな描き方で三次元の空間を生み出しました。

 

 

そうすると、必然的に画家の視点や感覚が中心に置かれた主観的な絵になります。「わたしは、このように観ています」と画家に答えられているような作品です。

 

 

20世紀が始まると画家たちは、見える世界にはないカタチで表現する抽象作品を描こうとしました。キュビズムの画家たちは、まず描くもののカタチを分析し、一度バラバラに分解しました。次にその一つ一つを、上下左右、いくつものポジションから眺め直し、再び集合させる、、、そんな描き方で多様な視点を含ませた二次元の平面に回帰させました。

 

 

そうすると、画家以外の視点や感覚も含まれているような客観的な絵になるのです。「あなたなら、どのように観ますか?」と画家に問われているような作品です。

 

 

モンドリアンの樹木のシリーズを観ると、キュビズムの描き方がわかりますね。

 



『グレー、ピンク、ブルーの​コンポジション​』Composition No.11 in grey, pink and blue 1913
曲線は感情的、直線は理性的。曲線がほとんど直線になり、より冷静な描き方を探究していたように思えます。
 

 

 

 『コンポジションNo.10 埠頭と海』Composition No.10 Pier and Ocean 1915
海を表している作品なのですが、『星月夜』や『クリスマス・イヴ』というタイトルで紹介されたりしています。
 
 

3) 十字架の黒

 

モンドリアンがオランダに帰省していた1914年に、第一次世界大戦が始まります。パリに 戻れなくなったモンドリアンはキュビズムとは別に、不変{質が変化しない}の神の存在を知 る神智学という学問を取り入れた絵の描き方を模索してゆきます。

 

キュビズムでは、バラバラに分解されたカタチは、円柱・球・円すいといったカタチに変えられていました。モンドリアンは感情的な曲線を取り払い、極めて理性的な黒い直線を用いています。

 

 

そんな黒い水平線と垂直線で生まれるクロスは、十字架にも見えますね。

 

 

ちなみに、、、地中に根を張る植物、水平の背骨を持つ動物、太陽に頭を向ける人間、その3 つを魂が通過してゆくと、残りの一つ、進化という方向へと向く、、、そういった美しい十字 架の捉え方があります。









『色彩のコンポジションAComposition in colour A, 1917
大きな色の面が入ってきました。
 
 
『大きな赤の色面と黄、黒、灰色、青のコンポジション』
Composition With Large Red Plane, Yellow, Black, Gray And Blue 1921
モンドリアンの代表的な『コンポジション』のスタイルが生まれてきた頃です。
 
 

 

4) 宇宙の白とグレー 地上の赤と黄と青

 

第一次世界大戦終戦後の1919年に、モンドリアンはパリに戻り、『新造形主義』という芸術論を書きはじめます。翌年の2020年には、その最初の一項がパリで出版されます。

 

 

 

この頃のモンドリアンは、40代の終わりを迎えていました。多くの失望の中で絵を断念することさえ考えていましたが、『新造形主義』をまとめ上げてゆくと同時に、現在の私たちが目にしているモンドリアンの代表的な『コンポジション』のスタイルが生まれてくるのです。

 

 

モンドリアンの学んだ神智学には、普遍的な宇宙の精神のエネルギーは、個別的な地上の人間や自然のカタチと連帯している、、、そんな捉え方があります。

 



普遍的なものとは、例えば太陽や星々のように常に存在しつづけているものです。その精神は目には見えず、意識されにくいものです。



個別的なものとは、例えば人間や自然のように生きかわり死にかわりするものです。そのカタチは目に見えやすく、意識されやすいものです。

 

『コンポジション』シリーズの白やグレーといった無彩色の平面には、普遍的な宇宙の精神が表わされています。赤や黄や青といった有彩色の平面には、個別的な地上の人間や自然が表わされています。

 

 

宇宙の精神が働きかけると、白やグレーの平面の大きさやカタチが変わります。地上の人間や自然に変化がもたらされ、赤や黄や青の平面の大きさやカタチが変わります。

 


反対も然り。実は、地上の人間や自然が働きかけることで、宇宙の精神に変化をもたらすことができるのです。

 

 

その有機的な動きのバランスが、十字架のような黒い水平線と垂直線として表わされています。

 

 

モンドリアンは、「分量と色彩が異なっていても、それらは同等の価値を持っている」という言葉を残しています。

 

 

『コンポジション』シリーズは、この多様さの中で、美しいバランスをとり続けることが大切 だという〈宇宙の調和〉を説いた〈抽象的な芸術〉作品です。






『ブロードウェイ・ブギ・ウギ』Broadway Boogie Woogie 1942−1943
ニューヨークに移住してからの作品。モンドリアンはダンスやジャズに惹かれましたが、なかでもブギウギを愛し、作品をもっとブギウギにしなければ...と話していたそうです。


 

 

 

5) 個別の輝きの中にある普遍の光

 

1番目の牡羊座でスタートした自分の探求は、10番目の山羊座でゴールを向かえます。11番目の水瓶座では、それまで自分の身を置いていた場を出て、風の星座らしく風に乗り広い空間へと飛び散ってゆきます。

 

 

そうして離れると、自分がいた場だけではなく、さまざまな人が身を置いてる場を眺めること ができます。そしてすべての場に共通してて、広く行き渡らせることができるもの、、、​水 瓶座はそんな普遍的なものを​探そうとする星座です。

 

けれども探し出したものは、それぞれの場にある歴史や文化といった個別的な特色が没してしまっているものであることもしばしば。ここにしかないものは何だろう?という悩みが生まれてきます。



モンドリアンは、個別的なものの中にも普遍的なものがある、ということを伝えています。

 

水瓶座の普遍的な​エネルギーが強くなってゆく時代、普遍探しの際に​悩みが生まれたら、まず は、自分の身を置いていた場にしかない歴史や文化などのルーツを辿ってみることをオススメします。

 

 

 

個別的な輝きの中に、​普遍的な光を​見つけることができるでしょう!

 

 




あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。
オリオンの綱を解くことができるか。 あなたは十二宮をその時にしたがって引き出すことができるか。 北斗とその子星を導くことができるか。 あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。

『ヨブ記』の第38章 31 33 の一説 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

次回の9kyuuの星のお便りでは、 ムンクの人生と作品の中に星を探します。

 

 

 

 

美術家 田谷美代子

印刷会社勤務の傍ら、子どもとの自然体験の場や絵本教室に通う。 絵を描くための哲学の必要 性を感じ、渡独にて人智学、その後占星術に出会う。 国内、フランスのギャラリーにて作品の 出展や、本の装丁、プロダクトパッケージなどを手がける。 また、現在子どものアートワーク ショップの開講に向け準備しております。

 

9kyuu Creative Director / Designer SAYAKA HAMADA

9kyuuのクリエイティヴディレクター / デザイナーであり、数年前よりミツバチの生態やアー ト、占星術、神智学、人智学、自然哲学、民俗学などを学んでいます。