9kyuu星の便りvol8 ムンク 叫び

物質世界への誕生 精神世界への誕生

叫び - 生命のフリーズ -

エドヴァルド・ムンク

The Scream - The Frieze of Life -

Edvard Munch

 

 

 

目次
1
) アート作品の中に星空を探す Vol.6「叫び - 生命のフリーズ -

2) 物質世界への誕生 1ハウス 精神世界への誕生 11ハウス

3) 感情の克服体験を教える

 

 

 

 

 

 

 

1) アート作品の中に星空を探す Vol.6「叫び - 生命のフリーズ -

 

 

 

2021年2月12日に起こる新月では、1ハウスから2ハウスにわたる水瓶座のサインに、太陽・月・水星・金星・木星・土星、、、といった6つもの天体が集まります。

 

今年3回、全て風の星座で起こる水星の逆行。その1回目が2月21日に終わると、4月27日までの 間、全ての天体が順行になります。12月末のグレートコンジャンクションの時点ではピンとこなかっ た風の時代の訪れも、この新月では具体的に感じられるようになってくるでしょう。

 

 

生きてゆくためには持っておいた方が賢明だろう、、、そんな社会の価値観のなかで蓄えてきたもの への執着がなくなり、これまでには思いもつかなかったことにチャレンジしていこう!というスピリット が湧き起こります。

 

 

セルフイメージをガラリ変えてくる人も増えてくるでしょう。 革新的なコミュニケーションツールがどん どん現れ、場所に縛られることなく仲間と公平に繋がろうとする動きが加速します。そういった流れか らビジネスが誕生してくるかもしれません。

 

今回の新月図では1ハウスといった場所、また11番目の星座の水瓶座がハイライトされています。 実はその2つは、ある共通の動きが起こるハウスなのです。

 

 

そこで今回は、誰でも一度は目にしたことがあるかもしれない『叫び』の作者、エドヴァルド・ムンクで す。今回も星空の中あるその謎を、一緒に眺めてみましょう!

 

 

 

 

『月光』Moon Light 1895年 「生命のフリーズ」の始まりとなった作品です。月明かりを〈愛〉や〈死〉の象徴と捉えていたムンク。海面に月の柱が光る絵を 多く残しています。

 

 

 

 

1863年12月12日、ノルウェーのロイテンで誕生したムンクは、表現主義の代表的な画家です。

 

19世紀後半、パリでは印象派の動きが起こります。その画家たちは、自分の外側にある風景などの ようすを強調して描きました。

 

それとは対照的に、20世紀前半、ドイツでは表現主義の動きが起こります。ムンクを含めその画家 たちは、自分の内側にある感情などのようすを強調して描きました。

 

 

 

 

『病室での死』Death in the Sickroom 1896年 結核を患った姉の死期が近づき、悲しみに打ちひしがれているムンクの家族が描かれています。「生に対する私の恐れは病 気とともに私には必要なものだ。不安と病気なしには、私は櫂のない舟のようなものだ」とムンクは後に書き残しています。

 

 

 

『マドンナ』Madonna 1895-1902年 受胎の瞬間、また、聖母マリア、愛する女性、ファム・ファタール{宿命の女・男を破滅させる女}が描かれているとも言われています。

 

 

 

 

 

『嫉妬 II』Jealousy II 1896年 ムンクは、このテーマを繰り返し描きました。手前にはムンクの友人の男性、奥にはムンクも恋をした友人の男性、の妻が描 かれています。

 

 

 

 

『吸血鬼 II』Vampire II 1895年 もともとは男性の首筋にキスをする女性を描いた「愛と痛み」という作品です。「吸血鬼」は友人が面白がってつけたタイトル。 愛が重荷になり始めた男性を女性が逃げないように噛みついているように見えますね。

 

 

 

『別離』The Separation 1896年 女性の髪が前に進もうとしている男性の肩にかかっています。恋人との思い出に囚われ前に進めない...そんな状況に見えま す。

 

 

 

ムンクの5歳の時に母が、14歳の時に姉が亡くなっています。25歳では父が、32歳では弟が亡くな り、妹、またムンク自身も、精神的な病での入院をしています。

 

 

生命に起こる困難な体験によって、心の奥深くから湧いてくる 不安” “恐怖” “苦悩” “葛藤。表現主 義の画家の中でもムンクは、そういった感情を数多く描きました。

 

『カール・ヨハン通りの夕べ』 Evening on Karl Johan Street 1892年 カール・ヨハン通りは、今もオスロのメインストリートです。「彼{ムンク}は、カール・ヨハン通りを行きつ戻りつしていた。夕方の 7時だった。... 彼は言い知れない孤独を感じた。かたわらを通る人々はひどくよそよそしく、ぎこちなく、夕べの薄明かりの中で彼を凝視しているかのようであった。」後ろ向きで右側を歩いているのは、そんなことを話したムンク自身とも言われています。

 

 

ムンクが生きた時代は、産業革命以降の機械化が加速した時代です。次々と生まれる無機質なも の。その反動で、生命の本質、有機的なものに対する探求が活発に起こりました。

 

 

絵画や彫刻、カリグラフィーなどで装飾された、横に伸びた部分をフリーズと言ます。 連続した場面を表していることもありま す。通常は目線よりも上に位置しています。

 

 

ムンクのアトリエの入り口付近です。テーマごとに絵をつなぎ合わせ、アトリエの壁面をぐるり一周、飾られています。

 

 

神殿の上部などにある帯状の連続した装飾部分を、建築用語で フリーズと言いますが、ムンクも 自分の描いた絵を、アトリエや展覧会場に帯状に連続させて飾りました。

 

 

 

『生命のダンス』Dance of Life 1899-1900年 〈生命のフリーズ〉の中心になった作品。画面左から右へと時間が流れ、白いドレスの女性は幼年や処女、赤いドレスの女性 は成年や娼婦、黒いドレスの女性は老年や修道女、そんな生命の3つの段階を表しているとされています。

 

 

 

そしてそれらを「生命のフリーズ」と命名し、 生命とは何か?という問いを、絵を通して投げかけま した。

 

占星術で使うホロスコープも、「生命のフリーズ」のように、生命、人間の成長が連続して描かれてい るものとして眺めることができます。

 

 

例えば、1ハウスから3ハウスは個人の成長、4ハウスから6ハウスは人間性や情操の成長、7ハウスから9ハウスは社会的な人格の成長、10ハウスから12ハウスは総合的な成長、といったようにです。

 

 

 

 

その中で2ハウスから10ハウスは、物質的な 見える世界と関係を深めながら成長してゆくハウス です。また12ハウスは、精神的な 見えない世界と関係を深めながら成長してゆくハウスです。

 

見えない世界との関係を築くことができなかった 生命は、見える世界の過程で、お金や権威など 本質とはかけ離れた世界の言いなりとなった成長をしてしまう可能性があります。

 

 

反対に、見えない世界との関係を築くことができた 生命は、見える世界の過程で、本質的な成長 が可能になってくるでしょう。

 

本質的な成長ができた"生命"が再び12ハウスに入ると、それまでよりずっと深い意識の層に触れる ことができます。

 

生命は、そんな上昇を伴ったループを螺旋状に、繰り返し繰り返し経験してゆく中で、より本質的な 生命へと成長してゆくのです。

 

『嵐』The Storm 1912年 ムンクがよく夏を過ごしていたアスガードストランド海岸。激しい嵐に見舞われ女性たちが「叫び」の絵のように耳を塞いでいま す。「月光」などの海辺の絵は、この海岸で描かれたとも言われています。

 

 

 

2) 物質世界への誕生 1ハウス 精神世界への誕生 11ハウス

 

冒頭にも書いていますが、今回の新月図では1ハウスと水瓶座がハイライトされます。 1ハウスでは、見える世界への誕生、11ハウスという水瓶座のハウスでは、見えない世界への誕。2つのハウスでは、そんな共通の動きが起こります。

 

 

産まれてきたばかりの赤ちゃんは、なぜ泣き叫ぶのでしょう?

 

 

それは母胎という慣れ親しんだ環境から離れ、未知の世界へ誕生する際に起こるストレスによる叫びであるとも言われています。

 

1ハウスと11ハウスでは、赤ちゃんが誕生する時のように、 不安恐怖苦悩葛藤と いった、ムンクの描いたような感情が引き起こされます。

 

 

けれどもそれは、新しい世界へ移行する1つの過程、本質的な成長への大切な通過点であると言え るのではないでしょうか?

 

 

誕生感の強い今回の新月。困難が起こったら、似たものが似たものを癒す、、、そんな代替治療の ように、ムンクの絵を眺めてみるのもいいかもしれませんね。

 

 

『太陽』The Sun 1911-1916年 生命の源の太陽を描いた、ムンク晩年のオスロ大学講堂壁画。「この闇の時代にあって、光、太陽、啓示に向かって進もうと 努力する人間性を表しています。」とムンクは書き残しています。

 

 

 

3) 感情の克服体験を教える

 

今回の新月は、『自分の感情の克服に成功した男が、自分の体験という観点から深い知恵を教える』というサビアンシンボルを持つ水瓶座24度で起こります。

 

困難な過去の体験が、まだ自己の欲望を克服することと戦っている人々に対しての模範となるそんな意味があります。

 

「私は自分の芸術のなかで、自分自身に向けて、生やその意味を説明しようとしてきた。また、他の人が自分自身の生を理解する助けになろうともしてきた。」と、ムンクは書き残しています。

 

知識ではなく実際に苦しんだ体験こそが、人々のお手本となる、、、ムンクの絵は今もなお、同じよう な問いを持つ人へエールを送っています。

 

 

今起こっている困難を誕生させる新月。このタイミングで 今まで思いもつかなかった自分の未来 をスタートさせてゆきましょう。

 

 

次回の9kyuuの星のお便りでは、 シャガールの人生と作品の中に星を探します。

 

 

 

あなたはプレアデスの鎖を結ぶことができるか。オリオンの綱を解くことができるか。 あなたは十二宮をその時にしたがって引き出すことができるか。 北斗とその子星を導くことができるか。 あなたは天の法則を知っているか、そのおきてを地に施すことができるか。

『ヨブ記』の第38章 31 33 の一説

 

 

 美術家 田谷美代子

印刷会社勤務の傍ら、子どもとの自然体験の場や絵本教室に通う。 絵を描くための哲学の必要性 を感じ、渡独にて人智学、その後占星術に出会う。 国内、フランスのギャラリーにて作品の出展や、 本の装丁、プロダクトパッケージなどを手がける。 また、現在子どものアートワークショップの開講に 向け準備しております。

 

 

9kyuu Creative Director / Designer SAYAKA HAMADA
9kyuu
のクリエイティヴディレクター / デザイナーであり、数年前よりミツバチの生態やアート、占星 術、人智学、自然哲学、民俗学などを学んでいます。