アメリカでの子育て経験で印象に残っていること、あれこれ | 9.kyuupartnerコラム

翻訳家 / Yamaguchi Hanae //

 

アメリカで出産し、息子が3歳半になるまで暮らしたニューヨーク州。子育ては初めての経験の連続で、ましてや慣れない生活環境での子育ては現地で出会った人々や友人のサポートなしでは乗り切ることができませんでした。全ての出会いに感謝です。日本に本帰国して、息子が日本の幼稚園に通うようになって、改めて感じたアメリカならではの子育て話など印象に残っていることについて今回は綴りたいと思います。

目次

  1. 子供の生活リズムを大切にするアメリカ人ママたち
  2. 下痢にはまず「BRAT」、通常の風邪はまず自宅で様子を見る
  3. アメリカ子育ての常識 ティージング(歯ぐずり)とアンバーネックレス
  4. 未就学児の子育てママの憩いの場、図書館
  5. エンターテイメント大国アメリカ、観劇や音楽鑑賞は身近な存在

子供の生活リズムを大切にするアメリカ人ママたち

子供がテクテク歩くようになると、公園やミュージアム、屋内遊戯場、図書館などに集まっては同じ年頃の子供を持つお母さん友達と一緒に子供たちを遊ばせるようになりました。

私がとても驚いたのは、アメリカ人は午前中の早い時間であっても、たいてい約束通りにやって来て、子供をしっかり遊ばせたら、昼食やお昼寝の前にはさっくり解散すること。つまり、子供の生活リズムを最優先にしているのです。たまたま私のアメリカ人の友人がそうであった可能性もありますが、周りに聞いても割とアメリカ人のママたちはそういう傾向があるようでした。月齢にもよりますが、未就学児の場合、昼寝も1〜2時間しっかりさせて、夜は読み聞かせをした後、19時半くらいには就寝させるケースが多いようです。

私も「郷に入れば郷に従え」の精神で、子供をできるだけ朝早く一定の時間に起こし、午前中にしっかり遊ばせて、必要に応じてお昼寝、そうでない場合はクワイエットタイム(お部屋で静かに集中して遊ぶ時間)を設けて、夕方にはお風呂に入れ、18時には夕食、そして19時半には就寝という規則正しいスケジュールに沿って過ごすように努めました。そのリズムを当たり前としてこれまで続けてきたので、日本に本帰国して一年経過した今も割と生活リズムを崩すことなく、過ごすことができています。



下痢にはまず「BRAT」、通常の風邪はまず自宅で様子を見る

アメリカで子供を出産後、1歳近くになり、寒い季節に突入すると息子は度々風邪を引くようになりました。咳や鼻水で眠れなかったり、急な発熱があったりすると心配になって、その度にかかりつけ医に電話をしました。アメリカでは予約なしに病院に行くことはあまり一般的ではなく、まず電話で看護師に相談をして、症状によっては看護師や医師からのアドバイスに従って家庭でできるケアをして様子を見ます。それでも治りが悪い場合は再度予約を取って、医師を訪ねるというのが一般的です。「食事を取れているか?便の様子は?嘔吐や下痢はしているか?顔色はどうか?眠れているか?」まず電話でその辺りを確認されます。

そして下痢やお腹の調子が優れない場合にはたいてい「BRAT」をまず試すように薦められます。BRATとは、バナナ(BANANA)、米(RICE)、アップルソース(APPLE SAUCE)とトースト(TOAST)という低食物繊維の食事の頭文字を取った造語です。消化が良く、食物繊維が少ないことにより、便を固くし、脂肪分や香りも強くないので吐き気を催すこともないそうです。アメリカのスーパーマーケットではオーガニックのライスシリアル(お米から作られたフレーク状のシリアルでお湯やミルクで溶いて簡単に作れるおかゆのようなもの)やアップルソースが手軽に手に入ることから、手作りする余裕がないときはそれらをよく利用していました。

子育てするまで、知っているようで知らなかったのが「風邪」のこと。以前、かかりつけの医師に「風邪の原因の80〜90%はウィルス性が一般的であり、細菌性の風邪にのみ効果のある抗生物質を服用しても意味がない。風邪を引いてもしっかり食事が取れているのであれば、むやみに風邪の初期段階で菌の温床である病院に連れまわすより、必要に応じて解熱鎮痛剤を使いながらゆっくり休ませてあげることが重要」と聞いたことを今も鮮明に記憶しています。

小さい頃は様子が急変したり、連続して嘔吐をしたり、不安になることも多いので度々急患にもお世話になりましたが、最近は子供との付き合いも長くなり、母親の感で病院に行ったほうが良いかどうか、ある程度正しい判断ができるようになってきました。

ちなみに、アメリカの保険制度は複雑で医療費も高いことから、日本に比べて病院へ行くハードルが高いということもそういったエピソードの背景にあります。



アメリカ子育ての常識 ティージング(歯ぐずり)とアンバーネックレス

乳歯が生え始めるときの痛みやむずがゆさを英語でティージング(teething)=歯ぐずりと言います。歯ぐずりのサインには様々なものがあるそうで、よだれがやたら出たり、口の中になんでも入れたがったり、風邪のような症状や夜泣き、また不機嫌になるなど症状も様々です。

日本の子育てガイドブックや日本人の友人からは歯ぐずりの話を耳にしたことがなかったので、定期検診の際に夜泣きについて相談した際、かかりつけ医からその話を聞いたときは、目からウロコでした。夜泣きがやたらひどい時期に口の中を覗くと小さな歯が出てきているのを発見したときは「これが原因だったのか!」と妙に納得したのものです。後々この話を日本に帰国した際に何人かの友人に話しましたが、聞いたことないと驚いた様子でした。

このティージング対策に多くのアメリカ人ママが愛用するアイテムがアンバー(琥珀)ネックレスです。アンバーに含まれるコハク酸には抗炎・鎮静作用があるそうで身に付けることで免疫力が高まり、心身の状態が整うそうです。オーガニック食材やナチュラルなアイテムに関心の高いママの間では常識のようで、アメリカで1歳前後の赤ちゃんを見てみると結構身につけている子がいました。副作用なく、赤ちゃんのティージングに効果があるとのことでアメリカでは人気でオーガニックストアやベビーグッズの専門店ならどこでも手に入ります。アンバーは大人の肩こりにも効くと手作りのネックレスを身につけている友人もいました。



未就学児の子育てママの憩いの場、図書館

子供が歩き始めると、子供の活動量も増え、体力発散に日中公園を訪れるお母さんは多いのではないでしょうか。アメリカでも同様、天気の良い日やあたたかい季節は多くのお子さん連れを公園で見かけました。しかし、ニューヨーク州の冬は長くてとても寒く、冬の間は公園に行きたくても行けない日が続きます。また、屋内遊戯場やミュージアムは遠かったり、割高だったりして毎日行く場所には不向きです。

そんな時にアメリカ人のママはどこに行くかというとポピュラーな場所の一つが図書館です。どの図書館にも子供用コーナーがあり、屋内遊戯スペース併設していることがほとんどでした。そして図書館が開催する子供向けのプログラムも大変充実していました。ストーリータイム(読み聞かせの時間)、クラフトワークショップ、子供のためのプログラミング教室、ズンバクラス、手作り教室(編み物やクッキングなど)など、特に歩けるようになる頃には参加できるクラスも多数揃っています。しかもほとんどが会費無料で、物価の高いニューヨーク州にあってとてもありがたい場所でした。

私も子供が7ヶ月くらいから参加するようになりましたが、どれも楽しいイベントが多く、母親である私も月齢の近い子供を持つお母さんと交流ができて良い息抜きになりました。



エンターテイメント大国アメリカ、観劇や音楽鑑賞は身近な存在

私も子供が7ヶ月くらいから参加するようになりましたが、どれも楽しいイベントが多く、母親である私も月齢の近い子供を持つお母さんと交流ができて良い息抜きになりました。

住んでいた場所から車で1時間ほどのところにあるマサチューセッツ州バークシャー郡に夏の間よく家族で出かけました。ここでは世界的に有名なタングルウッドという野外音楽ホールがあります。小澤征爾ホールがあることでも有名なので耳にしたことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。芝生席は確か20ドルくらいで1日中ピクニックを楽しみながら、クラシック音楽やジャズなどを鑑賞できます。芝生の上に寝転んでリラックスできるので、息子も赤ちゃんの頃はよく音楽を聴きながら、昼寝を気持ちよさそうにしていました。大自然に囲まれた素晴らしい環境の中での音楽鑑賞はホールで聴くのとはまた違った味わいがあり、忘れられない経験です。何より子供がちょっとおしゃべりしたり、歩き回ったりしていても周りの目が気にならないというのもありがたいですね。親がリラックスして楽しんでいると子供も自然と笑みがこぼれ、その場を共に楽しむように思います。

また、少し公共のマナーを理解できるようになってからですが、マンハッタンのブロードウェイミュージカルや地元で行われる子供向けのクラシックコンサートにも積極的に足を運びました。日本だと未就学児は不可ということが多いのですが、マナーさえ守れればOKということがアメリカでは多かったように記憶しています。少し集中して楽しむことができるようになったら、是非本物を味わうというのも良いですよね。

今もアメリカの子育て経験で良かったと思うことは続けたり、時々取り入れたりしています。



著者のプロフィール: 山口 華恵 Hanae Yamaguchi

東京女子大学 文理学部英米文学科卒業後、大手製薬会社、外資系PR会社および日系PR会社で広告・広報業務に携わった後、夫の仕事都合でベルギー・ドイツ・アメリカ(ニューヨーク州)で約10年間生活を送る。現在は夫と4歳の息子と茨城県つくば市に暮らし、フリーランス翻訳者およびPRコンサルタントとして活動。現在、ヨガジャーナルオンラインおよびmadameFIGARO.jp(フィガロジャポン)の翻訳を毎月レギュラーで担当している。本サイトでは、海外での子育て経験や国内外の暮らしの中での学びやヒントについてコラムを執筆。